VIPバスだと言われて連れて行かれたバスステーションには、しょっぱいバスが停まっていた。
現地の人たちの中、旅行者は5人だけの様だ。ローカルバスの余った席に、乗せてもらった。と、でも言うべきか。
詰め込まれた一番後ろの席はカーブの度に力を入れないと座って居られない。
それでも過酷と聞いていた24時間の移動は、寝て食べて話して音楽を聴いて窓の外を眺めて、
そうしていたら、ベトナムはハノイに着いた。
ラオスで知り合った健太郎くんも同じ夜にベトナム入りし、宿も近いとの事で、翌日ハロン湾へ一緒に行く事にした。ずっと行きたかった場所の1つだ。
ハロンとは龍が降り立った地と言う意味があるらしく、まるでドラゴンボールの世界。
数年前から世界遺産の写真集や各国のガイドブック、旅行記ばかりを集めては、日々ニヤニヤと過ごしていた。
指をくわえて眺めていたそれらの景色を、遺跡を、建築物を、いざ目の前にした時、
悲しいかな、期待が膨らみ過ぎて、あれ?と思う事は少なくない。
カメラマンがベストシーズンにベストスポットで撮った写真と対比するのもナンセンスなんだろうか。
紛れもなくハロン湾はそこにあって、生憎の曇り空の下、大小様々な無数の島々が遠くまで広がっていた。
もうずいぶんと写真やTVで知ってしまったその景色は、私の目に何だか色褪せて写った。
それでも振り出した雨が止み、改めて辺り一面を見渡した時、
来て良かったと思えるのは、やっぱり自分のこの目で見れたからだろう。見たかったからだろう。
目的地に辿り着くまでの過程はいつも楽しいし、この先もこの目で見たい世界遺産はたくさんあるんだ。
ハノイの町中へ戻り、乾杯した。
ベトナム料理を食べようと入ったお店で頼んだシーフードの鍋は豪華で美味しかった。店員のキュートなお姉さんが目の前で具材を入れ、取り分けてくれる。
ガツガツと食べてはビールを飲み、一段落した所で、
ベトナム料理とても美味しい!と伝えた所、これはラオス料理だと派手に笑われたんだった。
その国の人の満面の笑みを見た時、笑い声を聞いた時、その町を一気に好きになる。
ゲストハウスのスタッフ、同じバスの乗客、屋台で相席した人、話しかけて来る怪しい人。
人、人、人。
私はベトナムが好きでベトナム人が好きだ。
サパへ向かう健太郎くんとはここでお別れ。
またどこかで会えるだろう。そんな気がしてならない。
冗談の様な口約束もいつか実現するんじゃないかと思ってる。
雨漏りする窓側の席、汚い毛布で寒さをしのいだ。
スリーピングバスで18時間、次なる町はホイアン。
移動が続き、少し疲れが溜まって来た。
つづく。
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