それは今までのどの地でもない程の凄まじい形相で。
顔は近いは腕は掴まれるは道は塞がれるは、もう笑うしかなかった。
逃げる様に中国人の乗った車に乗り込み、そのまま着いたホテル。
少し高かったけど、ここに決めた。
そして、この日から始まる穏やかであたたかい日々。
何の気なしに入ったツーリストで知り合ったクマル。
着いて早々だったが、ジープサファリは夕方がいいよ、との事でそのままガタガタのジープでガタガタのジャングルへと連れてってくれた。
そこではサイやワニ、鹿を間近で見る事が出来た。
誰も居ない深い森の中をひた走る。どこまでも続く緑、いつまでもドライブしていたい。
安くして欲しいと要望した所、翌日はクマルとアシスタントのラモウのバイクの後部座席をゲットした。
国立公園を像に乗りのんびりと回り、川では像と一緒に水浴びをし、像の赤ちゃんを見に行った。
クマルは私たちをフレンドと呼び、仕事そっちのけでツアーにない村探索や自然が大好きなクマルとっておきの絶景スポットへと、連れてってくれた。
ごはんを一緒に食べ、ある夜はタルー族のダンスを見に行き、一緒に踊り、色んな話をしてくれた。
来年は私の彼も連れて来て、みんなでお酒を飲もうと。
仲良く3人乗りでドライブに出かけた日は、帰りスコールに降られ、途中の村で雨宿りをさせてもらった。
そこには私たちに興味深々の子どもたちがこっちへおいでと手招きする。クマルはのんびり地元の人たちとお茶をしている。
クマルが一緒じゃなければ、行けなかった場所、出会えなかった人。
本当にクマルと遊ぶ毎日は楽しかった。
初日に腕を掴まれた客引きのお兄ちゃんたちは、ホテルからすぐのツーリストにたむろしていた。
ついて行くと、そこには初日の光景が繰り広げられて居た。
20〜30人の客引きたちは威勢良く旅行客を取り合い、旅行客が各々去って行くと腰を下ろした。
お前たちは何してるんだ?と笑い、次から次へと冗談を言い出す。
あいつはバカだとか、こいつは食い過ぎであんなお腹だとか、結婚してくれとか、そんな内容だったと思う。
私たちが笑えば、それを見て更に派手に笑い転げるのだ。お腹がよじれる程、笑った。
何だいい奴らじゃないか。
小さい町だから、毎日誰かに会う。顔見知りがどんどん増えて行く。
挨拶を交わし、おしゃべりをする。
サファリツアーを終えれば、見所も少ない小さな町だけど、私たちにとってこの地はいくら過ごしても足らない程、居心地の良い、離れたくない場所となった。
つづく。
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